君ありて・Ⅱ

寺田 孝

2012年06月14日 19:09

「文芸あおもり」より  布施隆三郎

思ひ出の君と出逢いしこの木橋夏草茂り立ち入り禁止

縁あり君と引く網ひとすぢに疎開地めぐる川に沿ひつつ

暴走族に終はれわが君身を投げし淵に出で来よ幽鬼なりとも

散らされし十七歳の花ひとつわれの記憶の森に咲きつぐ

夢寝に来てあけぐれささやく君ありき越後のなまりあの日のままに

夢の逢ひは砂かむごとしはね起きてあかとき闇の君かきさぐる

疎開地のくらし十年山々をめぐる汽笛は夜をふかくす

先輩の三波春夫の像に寄るわれらの母校すでに廃校

君ありてもどる長岡市越路町めぐりゆきつく墓去りがたし

疎開地の山川さらば君さらば駅に流れし「この世の花」は